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ウクライナの潜水艦

世界のみんながピリペンコさんだったら、もっと平和になるんじゃないかな。なぜかそんな気持ちになりました。オプティミズムといい感じにゆる~いウクライナの小さな村の雰囲気がミックスして、心の風通しを良くしてくれる映画です。タイトルは『ピリペンコさんの手作り潜水艦』。最近、久しぶりに劇場に足を運んで見た映画の一つで、脱力しつつも感動したのでちょっと取り上げてみます。(写真ギャラリーという趣旨からは離れますが)


pilipenko_img1.jpg


これはドキュメンタリーなんですが、主人公のピリペンコさん(62才、年金生活)の30年来の夢は自分の潜水艦で海(黒海)に潜ること。一人でこつこつと潜水艦を作っています。と言っても、専門の知識があるわけではなく、参考書は30年前のスポーツ雑誌「水中スポーツマン」に載った記事のみ!そんな彼の道楽に文句を言ったり呆れたりしながらも結局は許してしまう奥さん。村人も同様で彼の強引さ(農繁期に潜水艦を海まで運ぶトラックを貸せとか)に翻弄されつつも、結構暖かい目で見ています。近くの池で潜水の予行演習を行った日などは村中が見物に集まって来てちょっとしたイベントです。それにしても池のしょぼいこと(笑)水溜りにしか見えません。そう言えば「イルカ号」と名づけられたキュートな二人乗り潜水艦も、緑色に塗られているせいかイルカと言うよりむしろ雨ガエルですね(笑)


IMGP7612-1.jpg


何かに憑依かれた人ってどこかに狂気を感じるものですが、ピリペンコさんは潜水艦以外のことではいたって常識人のようです。トラックを借りる交渉でも協力的でない村人を相手に粘り強く理性的に話を進めて行きます。また旅先からはきちんと奥さんに電話を入れるマメさ・優しさも持ち合わせています。このあたりが何だかんだ言われながらも愛されている理由でしょう。ピリペンコさん、一見すると変人度はあまり高くないんです。どちらかと言うと地味。めったに笑いません。でも、よく見てると潜水艦に関してはきわめて自分勝手だというのが分かってきます。例えば、池に潜った日にたまたま魚を売りに町に出かけていて見に来られなかった友人に対して声を荒げはしないけど、明らかにムッとしていたり。

映画の最後はいよいよ夢にまで見た黒海まで400キロの旅に出ます。到着した黒海を前にボソッと一言「家に帰りたくなった」と呟くピリペンコさん。これはドキュメンタリーのはずですが面白すぎます。はたしてピリペンコさんとイルカ号は無事潜水に成功するのか?

こんな感じでピリペンコさんはとっても魅力的なんですが、彼を受け入れる村の人たちにも何か心の豊かさのようなものを感じます。池での潜水に成功した夜は、羊を一頭料理して村人や親戚を交えた宴会が開かれたのですが、このシーンとっても好きです。物凄く豪華な料理だったり派手な踊りが始ったりするわけではありませんが、みんな本当に楽しそうです。この小さなウクライナの村の人たちは飲んだり食べたり話したり、そういう生きるってことの根っこの部分をとても大切にしているようです(多分、現代の平均的日本人よりも)。ちょっと羨ましく思いました。楽しい映画です! (監督: ヤン・ヒンリック・ドレーフス レネー・ハルダー 2006年 ドイツ映画)

公式サイト(予告編あり)
http://www.espace-sarou.co.jp/pilipenko/index.html


IMGP7613-1.jpg

パンフレット
his submarine (「彼の潜水艦」) の his という小さな一語(この潜水艦のように小さい!)にピリペンコさんの30年、それを見つめる奥さんや村人の眼差し、つまりこの映画のすべてが詰まっている気がします。


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Author:J.-P. Kuak
空想写真家、ノラ猫写真家、コラージュ作家。懐かしいものや鉱物も好き。

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