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青色捕獲術

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青色捕獲術
コラージュ


せいしょくほかくじゅつ
青色捕獲術
(英) azrotrapping, bluetrapping
名詞・西洋史

空から「青」という色を抽出して顔料などに利用する技術。17~20世紀前半に主に西ヨーロッパ諸国で密かに実践された。

顔料ウルトラマリンの原料となるラピスラズリは古くからアフガニスタンのバダフシャン地方が事実上唯一の商業的な産地であった。そして、「ウルトラ=越える、マリン=海」が示すとおり、はるばる地中海を渡りヨーロッパに運ばれ黄金と同じ値で取引される大変な貴重品であった。そこに代用品という発想が生まれるのは自然なことであり、絵画の下塗り用には似た色で安価なラズライトがしばしば使用されたようである。また1820年代には、合成ウルトラマリンも開発されている。以上がウルトラマリンの表の歴史とすると青色捕獲術はその裏の歴史に属する。それは青の顔料への需要と錬金術・神秘主義が結びついたところに生まれた。限られた人々の間で伝承されてきたものではあるが、文献に断片的に見られる記述を総合すると概略以下のような技術らしい。まず、背景となる世界観として天上と地上の照応・対応関係が重要となる。簡単に言えば「地上にあるものはすべて天上に似たものや元となるものが存在する」という思考法である。具体的には、青色捕獲術ではラピスラズリやサファイアなど青い貴石は空の色が微粒子となって地上に舞い落ち地中に蓄積して生まれたものだと考えた。空からこの青の粒子を捕獲する具体的な方法であるが、驚くほど簡単で、空に近い土地に立ち、ガラスの容器を縄の先端に取り付けたものを頭上で振り回す。このとき「おとり」として手に青い花を握っておく。基本的にはこれだけでありガラス容器の中には水が入れてあって、青の粒子はこれに溶け込むらしい。ウルトラマリンはこの水から結晶として析出される。ただし、この「水」が問題で、実際は口述でのみ伝えられる錬金術的に生成される特殊な液体であるらしい。なお、空の色は薄い青であるが、結晶という形に凝縮したものは見事な群青色であるという。

安価で美しい合成ウルトラマリンの普及によって青色捕獲術は無用の技術となったが、空の青からサファイアを作り出す研究に方向転換して暫くは生き延びていたようである。しかしこれも、1903年にアルミナの粉末を高温の炎で溶かしルビーやサファイアとして結晶化させるベルヌーイ法が確立すると次第に顧みられなくなった。だが、この神秘的な技術は現在でも世界各地に散らばった伝承者たちによって細々と実践されているとも言われる。


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テーマ : 加工・合成写真
ジャンル : 写真

コメント

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青の魅力

何だか澁澤龍彦さんの文章を読んでいるようでした。

人間はどうして、斯様に「美しい色」に魅せられるのでしょう。特に青に魅せられます。

空に向かって瓶を振り回すなんて、面白いですね!しかも青い花をおとりにするなんて!
パラケルススだったか、錬金術師たちは謎めいていて興味をそそられます。
油彩を描いていますが、ブロックスのようなこだわりを持つメーカーが好きです。
それでも貧乏だから、顔料の研究はちっとも進みません。ラピスラズリの天然顔料、
とても高いのです。錬金術師よ、美しい色の製法、教えて・・・・・

No title

今晩は・・・なるほど、凄い・・・そう言えば南極の氷って青いですねぇ?なぜだろう?

  

Re: 青の魅力

sumitoさま、
レスが遅れて、ごめんなさい。
青に魅せられる人は多いですよね。
私もそうですが。
理由は自分でもよく分からないです。
なので青を巡って妄想が膨らむばかりです。
気が向いたらまた記事にしてみます。

ウルトラマリンの絵の具、高いんですね。
私は単なる鉱物好きなので絵の具のことは実はよく知らないんです^^;

Re: No title

hidekiさん、
お返事が遅くなりましたが、南極の氷の色、不思議ですね。
ちょっと検索してみたんですが、光の散乱とか波長とか、色々と難しいことが書かれてました。想像で勝手なことを書くのはお気楽ですが、科学の理解には根気必要ですね。子供向けの解説ないかな?

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J.-P. Kuak

Author:J.-P. Kuak
空想写真家、ノラ猫写真家、コラージュ作家。懐かしいものや鉱物も好き。

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