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「不完全性」についてのメモ

ガラスの中の気泡が好きです。
高度な品質管理の下に生産される現代のビンやコップには、そういう規格外のノイズが混入する余地はないようですが昔のものは気泡があって当たり前。それがまた何とも言えない大らかさと個性を醸し出しています。眺めていて飽きません。

IMG_0819-1.jpg

プレスガラスの気泡
CANON PowerShot G11
(草のモチーフの周りに見えるのは気泡ではなく、元々のデザインです)

なので、初めて稲垣足穂を新潮文庫で見つけて読んだとき、『一千一秒物語』の即物的でドライなファンタジーももちろん良かったのですが、『弥勒』の中のこんなややウェットな一節にも惹かれました。

彼の部屋の窓硝子には、注意すると無数の細かな気泡がはいっていた。その中に一つだけ、スペクトラムの作用をする泡があった。それは視線の角度を変えるたびに、こんな美しい色彩が地上に在ったかと思える程な、豪華な赤色や、透き徹った青緑色や取りわけ彼の大好きな、得も云えぬ高踏的なヴァイオレットに変化した。それは彼が発見した変光星であった。

あるいは、ヒビ。
気泡がガラスにとって異物だとしたら、ヒビは損傷と言えるでしょう。
面白いのは純粋無傷なガラスは視覚的にはほとんど存在しないのと同じだということ。でもそこにヒビが入ると、その存在が顕になります。

ガラスにとっての気泡とヒビ。当たり前のことなんですが、含蓄のある現象だと思いませんか。異物や損傷、言い換えると「不完全性」ということの持つ意味についての。強引な一般化ですが、ものを考えるときの一つの視点にはなりそうです。

自己の不完全性が逆説的にその個性となり、自己の不完全性ゆえに自己の存在が顕著になる。


IMG_0647-1.jpg

不完全性について
CANON PowerShot G11


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テーマ : アートな写真
ジャンル : 写真

コメント

非公開コメント

No title

気泡・・・いいですねぇ、もしかしたらその時代の何かが封印されていて後々大発見があったりして・・・

Re: No title

hidekiさん、
> もしかしたらその時代の何かが封印されていて後々大発見があったりして・・・
空気の成分の違いなどから、その時代の気候なんかが分かるのかもしれませんね。
色々と想像が膨らみます。

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J.-P. Kuak

Author:J.-P. Kuak
空想写真家、ノラ猫写真家、コラージュ作家。懐かしいものや鉱物も好き。

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