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幸せの経済学

昨晩見た映画の感想を忘れないうちに書いておこうと思う。

『幸せの経済学』("The Economics of Happiness")

【製作年】2010年
【時間】68分
【監督】ヘレナ・ノーバーグ=ホッジ、スティーブン・ゴーリック、ジョン・ページ
【HP】http://www.shiawaseno.net/

レビューが難しい映画。
メッセージには深く共感するし啓発された部分も大きいが、一本の映画として楽しめたかと言えば疑問が残る。
少し具体的に言えば、これが映画である必然性があまり感じられなかったのだ。
ことばが多すぎる。
きれいな写真を贅沢に使った数十ページの宣伝パンフレットを無理やり映画にしたような、そんなふうに感じてしまった。

ヒマラヤの辺境にあるラダックという村でグローバリゼーションが豊かな伝統的社会を破壊して単なる「貧しい村」へと変えてしまうプロセスをつぶさに観察してきたスウェーデン人研究者がナレーションを務め、グローバリゼーションの負の側面を世界各地の学者・活動家などが具体的に指摘していく。またそれらの問題に対する処方箋ローカリゼイションの実践例が色々と紹介される。論点がよく整理されていて非常にわかりやすい。問題意識の高い人にはよい「復習」となるんじゃないかな。私みたいな普通の人には自分で考えていくその最初の一歩となる内容。また、ローカリゼーションの先にある社会を「貧乏くさい」ものではなく豊かで幸せなイメージで説得的に描き出すことに成功している点も印象的だ。

ただ冒頭で述べたようにことばに頼る部分が多すぎる印象。学者の説も大切だが、せっかくラダックというすばらしいケーススタディがあるのだから、それに映画というメディアなのだから人々の暮らしとその変化をじっくりと映像で見せてほしかった。研究者のことばより雄弁に訴えるものがあると思うのだが。ラダックの女の子の幸せそうな笑顔が印象的で見に行ったのだが、ラダックを重点的に取り上げているわけではないので、その点要注意。

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グローバリゼーションの大きな問題の一つは、巨大資本が力にまかせて地域の小規模な経済活動を破壊し(企業や商店を潰し)人々から職を奪い、その結果人々の関係が対立・敵対に基づくものになってしまうということだ。椅子取りゲームに例えると分かりやすいかもしれない。この映画でハッとさせられたことだが、そういう状況になってはじめて宗教間の対立が表面化するようだ。例えばラダックでは伝統的にはムスリムと仏教徒が平和に共存していたのだが、現在では衝突が起きているらしい。宗教っていうと昔はみんなもっと妄信的で、それに比例して異なる宗教間の摩擦も大きかったかのように想像しがちだが、実際は逆で普通の人々はごく普通に隣人として仲良くしてたのだ。満ち足りていればわざわざケンカなんかしたくないってのは「金持ちケンカせず」って諺どおり。逆の見方をすれば何か社会に異質なもの、少数派に対する非寛容さが漂い始めたとき、その裏にある(かもしれない)真の原因に気づくべきなんだな(「敵」を間違えるな)、そんなことを教えられた。

自動車産業が衰退した米国デトロイトで、市民農園みたいなのが純粋に食糧確保の手段として一般化しているらしいが、いかにも「以前はワルだった」風のアンチャン二人が(すみません、単なる外見で言ってます)トマトか何かを作っててなんとなく可笑しかった(笑)

ラダックに関するドキュメンタリーではないことを承知の上で見るなら良い映画だと思う。


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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

コメント

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教条的?

J.-P.Kuakさん、こんにちは^^

ラダックだけではなく、ブータンなども取材しているのかなぁと、勝手に想像して
しまいましたが、誰よりも信頼出来る映画評は、とても参考になりました。

ドキュメンタリーが陥りやすいことは、ついつい言葉が多過ぎて説明したり、
教条的になってしまうことです。対比させてでも、想像させる余地を上手く
つくらないと感動には至りませんものね。そして仰るように、リアルな村人の
姿を執拗に追うことからセンスよく編集して本質を表現出来ればよいものに
なって心が届くのでしょうけど。

僕はなかなか観に行く機会が持てません。月に1作品がいいところかも。
映画評、ありがとうございます^^

Re: 教条的?

はなさかすーさん、こんばんは^^

そうですね、少々教条的ですね。
否定的なニュアンスが強くなるのでレビューでは書きませんでしたが、この映画は一種のプロパガンダ映画だと思います。主張がメインなので言葉が多くなるわけですね。
ブータンのことも「国民総幸福度」関連でほんの少しですが出てきました。
全体としてメッセージは概ね肯定できるんですが、映画としてはイマイチ感が否めないです。
ちょっと残念ですね。

拙文が少しでも参考になればうれしく思います^^
面白い作品を見たら、またレビュー書きますね。

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J.-P. Kuak

Author:J.-P. Kuak
空想写真家、ノラ猫写真家、コラージュ作家。懐かしいものや鉱物も好き。

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